タバタビトファンのみなさん、Moikka!!


フィンランド中部の大学街・ユヴァスキュラ在住の学生ライター

Suomiのおかん こと こばやしあやな が

タバタビト&フィンランドサポーターの皆さんに向けて

やや玄人好みの現地レポートやエッセーを不定期でお届けします。


世に数多あるフィン情報発信サイトではあまり陽の当たらない話題を選んで

撮影写真やお役立ち旅行情報もたくさん交えながら

スオミという名の樹木から伸びる、枝葉の美しさをたっぷりとご紹介いたします!


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2014年02月05日

「スオミの枝葉」休載のお知らせとお詫び

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タバタビト・ファンの皆さま、下げた頭が上がらないほど、大変にご無沙汰しております。Suomiのおかんこと、こばやしあやなです。昨日は日本各地で大雪が降ったとか。こちら2月のフィンランドも、今朝は比較的気温が高めで(マイナス3度)やや暖かく感じてしまうほどですが、湖も厚く凍り、日によっては写真のようなダイヤモンドダストがきらめく、これぞフィンの冬!といった清々しい日々が続いています。

さて久々の投稿で皆さまにちゃんとお伝えすべきこと…それは題目にあるように、この度公式的に「スオミの枝葉」ブログを休載させていただきたい意思です。もちろんここまで長らく放置してしまうことになり、今更の期待も薄れさせてしまっていたとは思います。ざっくりとお話しますと、駆け出しのフィンランド在住ライターを名乗り始めた当初、まだまだ仕事らしい仕事もほとんどなく、どこかで情報発信の場を求めていたときにタバタビト主宰者さんと出会って、コラボレーションというかたちでフィンランド情報についての記事提供を続けてきました。けれどその後、ありがたいことに少しずつお仕事としての記事執筆依頼をいただけるようになり、ウェブ上の別コンテンツでコラムやフィンランド情報を連載させていただく場も増えてきたため、時間の問題に加えて立場上、記事の提供が難しくなってしまったのです。


とにもかくにも、長らくその公式的なご挨拶の踏ん切りがつかず、結果的に空白の時期をつくってしまい、申し訳ありませんでした。もし今後もウェブ上でSuomiのおかんのフィンランド情報を追いかけるよ!という方いらっしゃいましたら、例えば下記の連載サイトを定期的にチェックしてくだされば、随時ホットな情報が見られます!

All Aboutフィンランド
http://allabout.co.jp/gm/gp/1143/

株式会社メトス公式サイト内コラム
"Sauna on valmis!(サウナ、あったまってるよ!)"

http://metos.co.jp/features/saunaonvalmis/


また、日々のちょっとした現地だよりや、お仕事の成果、更新情報は、
随時Facebookサイトで配信中です。
https://www.facebook.com/suominookan


この一年で、このようにフィンランド在住ライターとしての知名度も少しずつ伸び、ユニークなお仕事を各方面からいただけるようになったその原点は、いつでも、ここ「スオミの枝葉」だと思っています。今後とも、あらゆるウェブやメディアを通じて、皆さんのフィンココロをくすぐるような情報提供を続けてゆくことを誓いますので、末永く見守ってくだされば嬉しいです。なおこのブログは過去記事を読める状態で保存しておくためにも、また、ひょっとしたらの復活の可能性を残して、「休載」として寝かせておくことにいたします。


短い間でしたが、記事をお読みくださっていたタバタビト・ファンの皆様、

kiitoksia lukemisesta! Nähdään taas joskus :)
(読んでくださりありがとうございました!またいつかお会いしましょう)


2014.2.5 ayana@jyväskylä.fi


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2012年10月27日

フィンランドで一番古い公衆サウナ

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今週一週間、フィンランド全土でははっきりとした冬の訪れが感じられました。ラップランドでは、昨晩なんとマイナス25度まで下がった地域もあったとか。

私の住むユヴァスキュラでは、週明けに初雪を迎えたかと思うと、昨日一日降り続いた雪のおかげで、今日は快晴・マイナス気温の真っ青な冬空の下、きらきらと白銀の世界がきらめいています。まだこの時期の雪が根雪となる可能性は少ないですけどね。ちなみに日本との時差が7時間となるウィンタータイムは明日28日からです!


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さて、そんなわけで少しでも体の温まる話題を…ということで、本日はタイトルの通り「フィンランドに現存する最古の公衆サウナ」についてご紹介したいと思います。

そもそも、「公衆サウナ」というのがどんなサウナのことを指すのか、からお話を始めましょう。

簡単に言えば、「公衆サウナ(Yleinen sauna)」とは、1800年代後半から1970年代ごろまで、フィンランド都市部の街角で営業していた「街のサウナ屋さん」のこと。せせこましい都市部住まいで、家やアパートにサウナなどなかった市民たちが、お金さえ払えばここで気軽にサウナ浴をすることができたというわけです。今も昔も No Sauna No Life!! な、フィンランドならではのこのビジネス…流行背景といいその役割といい、まさに日本の「銭湯」そっくり!そう考えると、なんだか親近感が湧いてきませんか??

ただやはり銭湯の歴史と同じように、公衆サウナビジネスは、時代の潮流の中でやがて衰退への運命をたどることになります。


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ヘルシンキに今も残る公衆サウナKotiharjun saunaの更衣室。古びた木製のロッカー、腕に通すゴムの通った鍵…日本の銭湯のそれを思い出さずにはいられません!

公衆サウナがもっとも流行っていた、いわゆる黄金時代は戦前1930年代から1960年代ごろまで。例えば1939年には、あの小さなヘルシンキの街だけで、なんと122軒もの公衆サウナがひしめいていたといいます。戦後の都市部には、街の復興と経済活性のために多くの(裕福とは言いがたい)労働者が集まってきており、公衆サウナはそんな労働者たちの一日の疲れを癒す重要な施設だったというわけです。

ところが同じく60年代ごろから、都市部の小さな家やアパートにも徐々に所有サウナが設置されるようになり、「個人サウナ」が主流になるとともに、当然ながら公衆サウナのニーズは急降下。保温エネルギー維持にかかるコストの高さからも、経営困難に陥った公衆サウナが、街角から次々に消えてゆきます。


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営業時間になると、レトロなネオンが灯る

日本でも、例えば東京では現在一週間に一軒のペースで銭湯が店をたたんでいると言われますが、それでも都内にはまだ800以上の銭湯が現存している事実に驚かれる方も多いのでは。

それに対して、フィンランドの首都ヘルシンキでまだ健気に営業を続けている、古き良き公衆サウナの数は…現在なんとたったの3軒だけ!!国内全部をあわせても10軒も行かないのではというくらい、公衆サウナは今や絶滅の危機にさらされているのです。ただその一方、もうまもなくヘルシンキのハカニエミ地区に、全く新しい公衆サウナがオープンするとの話題もあって(しかも設計担当は、日本人デザイナーのつぼいねねさんと、建築家の夫さんTuomas Toivonenさん!)、今まさに公衆サウナがにわかに脚光を浴び始めているのも確かです!


さてでは、今回私がレポートする「国内に現存する最古の公衆サウナ」の所在はと言いますと…首都ヘルシンキや古都トゥルクではなく、フィンランド第二の都市タンペレにありました!

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フィンランドがまだロシアに支配されていた1906年創業、6年前にちょうど100週年を迎えたという、タンペレ郊外の公道に面した何気ない一角に佇む、ラヤポルティン・サウナ(Rajaportin sauna)。これぞ今や、フィンの公衆サウナ業界の堂々たる最長老であります。

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もちろん100年前からこれだったということはないでしょうが、これぞ北欧デザインの先駆け?レトロな色調に風格を感じる、日本の湯屋の暖簾代わりのライト看板。


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このラヤボルティン・サウナの敷地内には、メインとなる男女別サウナが入った建物のほかに、サウナ上がりのお客さんがバスタオル一枚で入店できるカフェ、そしてマッサージ師の待機するヒエロラ(hierola)という施術室が収まっています。そしてその建物同士の間の通路や中庭には、サウナで火照った体のクールダウンがてら、バスタオルを巻いたお客さん同士がドリンク片手にコミュニケーションを楽しむベンチ、グリルスペースなどが設置されています。


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そしてこちらが、男女別の入口扉の手前にある会計場所、銭湯で言うところの「番台」です。ほとんど相手の顔も見れないこの小窓から、おじさんとやり取りしてお金を払います(料金などは一番下の店舗情報をごらんください。銭湯よりは相対的に割高で、平日料金と休日・休前日料金に分かれています。子供料金もあります)。バスタオルは基本的に皆さん持参しますが、有料レンタルも可能です。まや、サウナといえば!の、体をしばくために白樺の葉を束ねたヴィヒタ(Vihta)も、4ユーロでレンタルできるほか、各種ドリンクも(ビールなどの低アルコールも)かなりお安く販売されております。


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お金を払い、女性用入り口をくぐると、このような、一見ただの上着架け用?と思われる狭いスペースに通されます。でも、じつはここがもうれっきとした「脱衣所」。当時からのスタイルを守るこの伝統公衆サウナでは、ヘルシンキのように個人的なコインロッカーすらないんですね!!まあ、おそらく当時は入浴料以上の貴重品をわざわざ持ってくる人はいなかったのだろうし、(そうはいってもここはフィンランドだし)あとはもうお客さん同士の信任性に委ねるしかない、ということでしょうか…。立ち寄られる方は、くれぐれも身軽でお越しください。この部屋も小窓で番台と繋がっているので、なにかあればお店の人との交渉も可能です。


先客さんの作法を真似て潔くこの部屋で脱衣を済ませ、エチケットとしてベンチに敷くためのミニタオルだけもって、いよいよ奥の古びた扉の向こうにまつサウナルームへと繰り出します。扉手前の手書きの注意書きには、「浴室内での毛染め禁止」など、日本のお風呂屋さんを彷彿とさせる訓示が列挙されているのもなんだか面白い(笑)


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トイレ前のレトロな体重計も、これまた日本の銭湯チックで趣きがありますなあ。


さて、ここからはもちろんカメラを持ち込むこともできませんので、適宜お店のHPで公開されている(きっと裸のモデルさんたちにも許可を得られているのであろう)写真をお借りしつつ、その全貌を公開いたします!

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Rajaporttisaunaウェブギャラリーより


重い扉を開けた地点から見ると、すぐ正面の半地下、にベンチ付きのいわゆる「かけ湯」スペースがあり、サウナ室は、右手の階段を登った奥になります。これは明るく写してある写真なので一見して状況が飲み込めますが、実際は(すくなくとも女子側)には天井で一つ白熱灯ランプがほんのりと灯っているのみで、とにかく薄暗く、素っぱだか洞窟探検のような心境に追い込まれます(笑)滑らないよう、手すりを頼りに慎重に身動きをとるようにします。

かけ湯スペースには、最初だとやや温かいかなと感じるくらいのぬるま湯を張った小さな浴槽があって、そこに取っ手つきの洗面器がいくつか放り込まれています。しつこいようですがあくまで伝統スタイルに忠実なこのサウナでは、何を隠そうシャワーなんて文明の利器も一切ございません。この浴槽のぬるま湯で、かけ湯も体洗いもすべてやりくりするのです。


そして暗闇の階段を登った先には…お待ちかねの、サウナベンチ!

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Rajaporttisaunaウェブギャラリーより


が、ここもまっくらで、もはや話し声で他人の存在を認識し、手探りで空きスペースを確認し、おそるおそる陣取るしかありません(笑)スペースは決して大きくはなく、座れても10人そこらではないかと思います。


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Rajaporttisaunaウェブギャラリーより


サウナを暖めているオーブンは、もちろん昔ながらの薪炊き(余談ですが、日本でも最近は薪焚き銭湯がすくなりましたねえ…お湯のまろやかさがガス炊きとは全然違うのですよ!)。定期的にお店の人が薪をくべに来ます。じつはこのサウナオーブンは男女個室の中央に柱のようにでんと構えており、壁でこそ仕切られているけどつまりは共用。ただ、オーブンの上の焼け石に水をかけるのは、ここでは暗黙的に男性客のほうがその役割を担うのだそう。

あとはもう特筆すべきことすらない、質素で、シンプルで、視覚以外の感覚器を研ぎ澄ましてただじっと熱に耐えるためのサウナ。じんわりと、体の芯の芯部まで熱い蒸気が染みこんできます。


無言でその熱波に身をおくのも良いですが、公衆サウナならではの楽しみはやっぱり、見ず知らずのお客さんとの裸の身を寄せあってのお付き合い。そこでは自然と声がかかって会話が生まれ、意気投合してしまう嬉しい瞬間があります。私がここを訪れた時に先に座ってらっしゃったのは、お一人はもう何十年もここに通い続けているという地元常連客のおばあさん、そしてもう一人は、とにかくここのサウナが好きで、ヘルシンキから定期的にわざわざやってくるのだという中年の女性。ふたりとも口を揃えて、ここがフィンランドのベストサウナだと主張されていました。日本の銭湯と同様、公衆サウナの栄光時代を知る世代の方々にとっては、やっぱりいつまでも最高のリラクゼーション&コミュニケーション空間として体が覚えてらっしゃるのでしょうね。

そんなわけで女性ルームの方は、あとからやってきた方々を含めてさすがにヤングレディのお客さんはいらっしゃいませんでした。自宅やコテージで、一人のんびりと、あるいは家族知人と入るサウナの愉しみのみを知る世代にとっては、好き好んで赤の他人と古びたサウナにこもる…というのはちょっと理解し難いものなのかもしれません。でも、「古き良き」には懐古以上の思いがけないアイデアや美点だって残っているものです。


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Rajaporttisaunaウェブギャラリーより


すでに日暮れのころ、私も小休憩にとバスタオル一枚を体に巻きつけ、ドリンク片手にお店の中庭に出てゆくと、ちょうどこの写真のように、多くのお客さんがやはりタオル一枚の格好で涼みに来ていました。あきっぱなしの門のすぐ外はごく普通の住宅街だというのに!


常連客も一見さんも、いわば互いに他人同士が、やましい感情一切抜きに、全身から湯気を立ちのぼらせて会話をはずませている、ちょっぴり奇妙でなんとも平和な光景。

フィンランドでは昔から、サウナの中だけは身分も国籍も性もすべて平等で、誰もがその快楽を一緒に享受できて、互いを白樺の葉で叩き合い、コミュニケーションを楽しむ場だったのだとよく言います。

日中に身を置く社会のなかでは実現しそうにない、先入観や肩書きには支配されずモラルには守られたユートピア。その名残が、今でもフィンランドの都市の街角にひっそりと息づく公衆サウナの姿といえるのかもしれません。


◆◆◆◆◆◆

さて、実はこの日のサウナ浴後、私はさらに施設内にあるマッサージ室を予約してあり、フィンランドの伝統マッサージも体験してまいりました!

伝統といっても、施術を担当してくれたマリさんいわく、これぞフィンランドという確固たる療法ややり方があるわけではなく、昔から他国のやり方を取り入れつついろんな地域で「これはいい!」と実践されてきた方法を集めたプラン、という感じのようです。

とりわけ、生活の場でもっとも清潔な場所ということで古来フィンランドでなされてきた療法のひとつが、いわゆるカッピング(吸玉)療法。小さな耐熱容器を真空状態にして肌に吸着させ、しばらく固定させて悪い血を吸いだしたり、吸着状態で肌の上をぐりぐりと動かし血行に働きかけたりする方法で、アジアでもお馴染みの手法です。今でこそ吸着容器にはシリコンが使われるそうですが、それこそかつてフィンランドでは、動物の角を使ってこれをやっていたそうで、吸引した悪い血は人の口で吸い出していたとか…。

というわけで、フィンランド版カッピング療法初体験!!

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(すみません、私の見苦しい生足ご容赦ください)


写真ではわかりづらいかも知れませんが、マリさんが片手に炎の上がる脱脂綿を、片手に例の吸着容器を持っていて、容器をさっと火にかぶせて真空状態にし、瞬間的にびたっと私の肌に押し当てます。その吸着力たるや、すぐに真空管内の肌がまっかに盛り上がるほど。それを、ぐりぐりっと上下左右に移動させては、ぽんっと肌から離して圧を抜く、の繰り返し。

正直、容器が自分の肉に吸い付いて移動している間は、涙を目に湛え悲鳴をあげずにはいられない激痛を伴います。とりわけ、肉付きのうよいあたりをやられるときの痛みと言ったら…思い出したくもない!!(笑)

ただ、そのあとには(他のたいぷのマッサージやツボ押しも併せてやってくれるのですが)、驚くばかりに、体がスカッと楽!!!弦楽器を弾くので普段から慢性的に肩が重く、またここのところためこんでいた身体の倦怠感を、(絶叫とともに)軽やかにそぎ落としてもらった気分です。1時間40ユーロ(4000円)と日本のマッサージ屋と比較しても割安なこのフィン流荒療治(笑)、ぜひサウナとあわせて一度ご体験あれ!


では最後に、本日ご紹介したラポルティン・サウナの営業情報を。ムーミン博物館だけではない、タンペレ観光の新名所となることを期待しつつ!



Rajaportin sauna


住所 Pispalan valtatie 9, 33250 Tampere

電話 +358 03 222 3823

営業時間 月・水曜18.00-22.00 / 金曜15.00-21.00 / 土曜14.00-22-00
(併設カフェは月・水曜16:30-22:30 / 金曜13:30-21:30 / 土曜13:30-22:30)

サウナ浴料
月・水曜5€ / 金・土曜8€ / 6-15歳児2€ / 5歳以下は無料

ウェブサイト(英) http://www.pispala.fi/rajaportinsauna/index.en.php




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posted by Suomiのおかん at 23:23| Comment(0) | とっておきスオミへの旅案内 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月30日

島の民が考案した、お魚と相性のよい伝統パン

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モイッカ、Suomiのおかんです。
皆さん、長らくご無沙汰しておりました!!

諸事情で夏休みのあいだ更新することが出来なかったのですが、秋を待ち…どころか、フィンランドでは今まさに紅葉のピークを迎えるほど秋も深まり、ようやくまた継続的にこちらのコラムも更新してゆけそうです。以前と変わらず月2回ほどのペースで、フィンランド初心者から玄人の皆さんまでオールラウンドに楽しんでいただけるフィン変わりネタを、引き続き紹介してゆこうと思いますので、どうぞよしなに!

◆◆◆◆◆◆

さて、今日は私が最近買い置きする頻度の高い…どころか、ついに愛着高じて自ら作ってしまうようになった、フィンランドのとある食卓パンをご紹介いたします。

その名も、Saaristolaisleipä(サーリストライスレイパ)

縮めて、サーリストレイパとだけ呼ばれることも多いです。

レイパは、フィンランド語で「パン」の意味。

対して、サーリストライスというのは「群島に住む人々」の意味を持ちます。

フィンランドで「群島」といえば、多くの人がフィンランド南西部のバルト海(ボスニア湾の入口付近)に無数に群がる小さな島々のエリアを思い浮かべます。本土の縁に位置するナーンタリのムーミンワールドから海を望むと、瀬戸内海のしまなみ海道を思わせる小島がぽこぽこと浮かんでいた記憶がある方もいらっしゃるのでは。

このあたりの島々の大部分は「オーランド諸島」とも呼ばれていて、住民のほとんどはスウェーデン系でありながら、歴史的な経緯からフィンランドに帰属し(実はこれを調停したのがかの新渡戸稲造!)現在も「フィンランド自治領・オーランド」として独自の行政法をもつ、少々込み入ったエリアです。


この群島エリアの特産物といえば、やっぱりシーフード。日本のように魚を生のまま食べるということは、本土はもちろんこの群島エリアでもほとんどしないのですが(湖魚を生でというのはやはり不安ですしね…)、たとえば酢漬して保存食にしたニシンや、塩漬けしたサーモンなどは、例外的に火を通さずもよく食べられます。とりわけニシンは昔からこのエリアの大事な食材。9月の上旬に海辺の街で開かれる「ニシン市」も毎年の風物詩です。

さて、そんな海の恵みをより美味しく食べる工夫…として、日本では世界に誇れるSUSHIがあります。バリエーションはあるにせよ、寿司の原点はやはり、甘酸っぱい酢飯と、新鮮な魚の切り身との融合。お米に染み込んだ酸味とほのかな甘味こそが、魚の旨みを引き立ててくれます。

前置きが長くなりましたが、実はこのサーリストライスレイパは、言わせてもらえばまさにフィンランドの酢飯!海鮮を日常的に食べる海辺の人々が生み出しただけに、お魚との相性バツグンの秘密を堪えた変わりパンなのです。


ではどんなパンなのかをご理解いただくために、今からまずそのレシピをご紹介します。

「大味さ命!」がモットーのフィンランド料理の例に漏れず(笑)工程はわずか5行に収まるくらい簡単。おそらく一番大変なのは、材料をひと通り買い集めることでしょうか。実は私自身、日本にいるときに複雑なパンを作ったことがなく、これらの各種粉類が日本のスーパーでもすぐ手に入るものなのかがわかりません。少なくともフィンランドのふつうのスーパーの粉売り場にいけば、これらは全部ひと通り陳列されていて簡単に買い揃えることができます。

Saaristolaisleipä (2-3斤分)つくり方


材料…
※ピーマ 10dl 
ドライイースト 30g
☆シロップ(以前ロールキャベツのレシピで紹介した黒糖シロップ) 3dl
☆ビール麦芽 3dl
☆麦糠(むぎぬか)3dl
☆ライ麦粉 3dl
☆強力粉 10dl
☆塩 大さじ1
バター 容器に塗りこむ分


※ピーマというのは、フィンランドの乳製品売り場で普通の牛乳の横に必ずならぶ飲む発酵乳のこと。日本だと、無糖ヨーグルトや何かしらの無糖・無塩発酵乳で代用できると思います。

ちなみに、粉モノまでを「dl(1dl=100ml)」表記するのには違和感があるかもしれませんが、これは計量カップさえあれば、いちいち計りで重さを調整する手間が省けるので慣れたらラクだと思いますよ〜。フィンランドのレシピ本はだいたい何でもdl表記が基本です。

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@ピーマをレンジか鍋で人肌温度に温めておき、ドライイーストを加えてよく混ぜる。

A☆の材料をすべて@に入れて、木べらでざっくりよく混ぜあわせる。

B内側にバターを塗っておいた耐熱容器に流しこみ(このあと発酵で1.5倍くらい膨らむので入れ過ぎない)、1時間30分ほど室温で発酵を待つ。(上の写真は発酵後のものです)

C175度に温めておいたオーブンで、1時間30分焼き上げたところでいちど取り出し、表面が焦げ付いてきていたら、水で薄めたシロップ(分量外)をはけで塗って、さらに30分焼く。

D取り出してしっかり冷ましてから切り分ける(実際は焼きあげてから3日後が一番美味しいそうです!)。



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…と、こんな豪快きわまりないレシピで出来上がるのが、表面は真っ黒、内部も実にどっしり雄々しいライ麦パン。でも、食感はしっとりもちもちしていて、麦芽やシロップの甘味がふわっと香り、とっても風味豊かです。
冷えてしまってもトースターで軽く焼き直し、バターをたっぷり塗って食べるとどんどん手が伸びることまちがいなし!(でもすぐお腹いっぱいになるし、腹持ちもいい)


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そしてこの、ライ麦パンならではの酸味と、独特の甘み、そして力強いテクスチャこそが、すでに塩気のある生魚をしっかり受け止め旨味を引き立ててくれるので、やっぱりいちばんオススメの食べ方は魚といっしょに!サーモンの上には、ブラックペッパー風味のサワークリームと香草のディルをトッピングしているのですが、個人的にこの組み合わせは最強だと思っています(笑)
サーリストレイパをクラッカーのように少し小さめに切り分けて、これらをトッピングしたものを、最近はよくホームパーティのウェルカムオードブルに使いまわしています。


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こちらは、通学路でたまたま見つけて採ってきた食用キノコを玉ねぎとバターで炒めて、トッピング。これもまたパンの風味とマッチして、フィンランドの素朴な秋の味覚を堪能している幸せに浸れます♪


作るのが困難でも、サーリストライスレイパはフィンランドのスーパーのパン売り場に立ち寄れば、大概何社からか発売されているのに出会えますし(個人的にはElonenという会社の売り出すサーリストレイパが一番好きです)、もちろんパン屋さんにも置いてあります。たとえば現地旅行中、ホテルの朝食で必ず出されるライ麦パンにも慣れてきて、ワンランク上を目指したい方にはお土産にもオススメです!ぜひ名物ニシンの酢漬けやサーモンとあわせて、まさにお寿司の酢飯のイメージでご賞味ください。

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posted by Suomiのおかん at 01:54| Comment(1) | お手軽スオミ味レシピ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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